askaryotug’s blog

~ ASKAへ ~

たった一人のオリンピック

「たったひとりのオリンピックテーマ曲」ー。

 

2017-08-17「歌える喜び。」と題して、
先般のMV収録時に披露されたことが、ブログで報告された。

 

2020年に開催される「東京オリンピックテーマ曲」のために、ASKAが書き下ろしたもの。

 

昨年、それは意図しないところで、勝手にメディアに流され、
全くもって、不本意な形で世間に知られるところとなってしまった曲だ。

 

その曲を書くにあたり、原動力となったのが、
この「たった一人のオリンピック」の主人公、「津田真男」さんの実話であると、
ASKAはブログの中で語ってくれた。

 

スポーツライターとしても名高い、山際淳司氏の手によって、書籍化されているという。

 

さっそく、入手。
折しも、かつて胸を熱くし、山際淳司の名を知るきっかけとなった、
江夏の21球」などを収録した作品集「スローカーブを、もう一球」の中にそれはあった。
(彼のノンフィクション作家としての力量については割愛しよう)

 

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読了後の率直な感想として。

 

わずか数十ページの中に凝縮された、津田真男という一人の人間の生きざまが、実に潔い。
これは、山際淳司氏の手腕によるところもあるだろうが、津田氏自身のポジティブな考えと、
「当たり前」が「当たり前ではない」革新的思考が更にそう思わせる。

 

二浪して東海大学に在学していた津田は、エリート戦線から離脱し、麻雀などに明け暮れるが、
同級生らが社会で活躍し始めたことなどに奮起。
1975年、オリンピックに出ようと決意する。

 

数多ある競技の中から、いくつかの種目を検討したが、結局はボート競技の種目のうち、
一人でもできるシングルスカルに決める。
その選択の仕方に、彼の個性と生きざまとしての魅力を最大限に感じる。
そんな思考と、「人生を勝ちに行く生き方」が、私の中でASKAと被る。

 

ページをめくっては、ASKAがこれまでブログで語った「戦い方」であり、「生き方」が、
脳裏をよぎった。
ある意味、孤独な戦いであったあろう、彼の挑戦。
しかし、個人競技であるがゆえ、自由な発想のもと、彼は限りなき戦いの術を見出す。

 

当たり前だと言われている伝統を、盲目的に受け入れるのではなく、
実に、客観的に、理にかなった手法を、独自に改革的模索をする。


全くの素人だったが、努力を重ね、ついにモスクワオリンピック代表選手となるも、
日本のモスクワオリンピック不参加により出場はかなわなかった、津田。
「結局は、自分のためにやったこと」
そうして、彼の「たった一人のオリンピック」は終わりを告げた。


モスクワオリンピックを日本がボイコットし、彼のメダルは叶わなかったが、
それでも彼の中では「たった一人のオリンピック」があったのだと、心が熱くならずにはいられなかった。

 

是非、ASKAがオリンピックテーマ曲を作るに至った原動力になったという、
「たったひとりのオリンピックテーマ曲」を、いつか拝聴したい。

必ずね。

 

ASKAへ。
津田真男さんを、ご紹介くださりありがとう^^

そして―、
貴方の生き方…本当にカッコイイです。


私は…そう思っています。

 

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著者:山際淳司
   1948年神奈川県生まれ。
   80年「ナンバー」創刊号の短篇ノンフィクション「江夏の21球」でデビュー。
   81年「スローカーブを、もう一球」で第8回日本ノンフィクション賞受賞。1995年、没。

受賞:「江夏の21球」などを収録した作品集「スローカーブを、もう一球」で、
   1981年に第8回角川書店日本ノンフィクション賞を受賞。
著者略歴(「BOOK著者紹介情報」より)
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[余談]

私が、山際淳司氏の作品に出会ったのは、
1980年に発行された、文藝春秋の「Sports Graphic Number」の創刊号だった。
江夏の21球」というノンフィクションで、
前年の日本シリーズ第7戦の9回裏に投げた、江夏豊(当時は広島東洋カープ所属)の21球に
焦点を当てたものだった。
カープファンではなかったが、誰もが目を話すことのできない、とても長く長く感じるイニングの
出来事だった。
その山際氏の文面を目の当たりにした時の衝撃は、テレビで感じた緊迫感を超え、
余話がない…隙がない空気感に驚きを覚えたものだ。
それから、彼の書く「野球もの」に、多々目を通すことが好きになった。
(野球好きという前提があることも、加筆しておこう)
そして、今回。
野球を離れてのスポーツ作品に初めて触れたが、彼の書く目線は変わらない。
本書、「スローカーブを、もう一球」の中には、先の「江夏の21球」を含めた8作品が収められている。
さて、改めて読むとしようか―。