【2章:Interview】 Too many people Music Video + いろいろ
本作品で最も充実感を得、膨らみを持たせてくれたのが、このInterviewだった。
音楽評論家の田家秀樹氏による、全7編からなる構成は、
「Too many people」の曲たちを、より浮き彫りにし、熱いASKAの想いを肌で感じることができる。
今、もう一度…
「Too many people」で印象深い楽曲を、インタビューと共に顧みてみよう。
★♪FUKUOKA:
歌詞の中にある「ニューシネマパラダイス」。
ASKAが魅了され、テイストを入れたという、同名の映画。
映画を観た方であれば、誰もがあのノスタルジックな世界に魅了される名作だ。
FUKUOKA―。
その映画をオマージュさせる美しい旋律は、心を鷲掴みにする。
ASKAの人生のスタートがそこにあって、今もなお彼を救える暖かい場所。
この楽曲が、リスタートとなるアルバムの1曲目であることが何より相応しい。
あれから、何度聴いただろうか。
田家氏が「邪気のない素直な感じ」と評した分、心への浸透が深いものとなり、
全く色褪せない楽曲となっているのは間違いない。
★♪東京:
最初にこの「東京」のイントロを聴いた時のショッキングな心持ちは、簡単には語れない。
インタビューの中で、田家氏が語ったように、
「この煌き方がC&Aを思い起こさせる」ことにあまりにも大きなショックを私は受けたのだった。
最初にこのタイトルの楽曲がアルバムに含まれることを知った時、
この少し前にブログにアップされた散文詩「東京」(2016/11/18掲載)に、
音が乗ったものを想像していた。
少し影を落とした、ASKAの中の「東京」。
それを見事なまでに裏切り、別歌詞にてC&Aサウンドを彷彿とさせる「陽な楽曲」に仕上がっていた。
これには、圧巻という以外の言葉は見つからなかった。
このイントロといい、間奏といい、心から高揚する気持ちを抑えることができない。
そして、少し当時の自分の心情を語るならば、、、
ASKAにとっての「東京」が、明るく生きていく場所であり、大股で歩いていく場所であってほしい。
先の「FUKUOKA」が故郷であり、心の帰る場所であったとしても、長い間を過ごしたこの東京が、
決して辛い場所でないように、強く願っていた私にとって、何より嬉しい一曲となった。
そういう意味でも、これは、想像を反して私の心を明るくし、
一歩前に進めさせてくれた、思い入れのある楽曲だ。
★♪通り雨:
田家氏も絶賛した、この曲の軽快さ。
このアルバムで、FUKUOKAと同様に最も好きな曲だ。
マッキーさんのギターで始まるイントロ。
雨だれの音を醸し出す、音色とメロディライン。
私の中に湧き出た妙な感情と感覚。
どこか懐かしい、そして淋しさを覚えた瞬間、私の心が一瞬にして上気した。
その時の感覚は何だったのか、このInterviewでやっとそれが明らかとなった。
このイントロが、ギルバート・オサリバンの「Alone Again」(*1) の間奏部のメロディラインを
彷彿とさせるのである。
そうか、これか!と合点がいったことは言うまでもない。
話は脱線するが、この「Alone Again」は、メロディラインの美しさに反し、歌詞が実に暗く、淋しい。
この曲がこの世を騒がせた頃、ASKA同様、私も非常にお気に入りの一曲だった。
しかし、中学に入り、この歌詞の意味を知ってから、私の中では「最も淋しい孤独な一曲」として、
あまり耳にすることがなくなり、忘れられた楽曲となった。
そのために、マッキーさんのギターを聴いた時のあの回生された記憶や感情が、遠い記憶をまさぐり、
奇妙な感情をもたらせたのだ。
だがこの楽曲は、意を反して「明るく」「幸せ」な感情を抱かせてくれた。
正に「陰と陽」として、この美しい2曲の音の流れは、心を優しくしてくれる。
MVについては、自身の「2017-07-22 ♪通り雨」で書かせていただいたので割愛するが、
秀逸のラブソングであり、大本命であることには間違いない。
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※(*1):Gilbert O'Sullivan/♪Alone Again
Youtube:https://www.youtube.com/watch?v=D_P-v1BVQn8&list=RDMMD_P-v1BVQn8
★♪信じることが楽さ:
お母様と重なる想い。
そして。
人が嘘を語っていたとしても、「言っていることを信じてあげる方が楽」。
そうインタビューで語っていたけれど、それはASKAの内面にある、人柄であり、
本当の優しさであると私は思う。
それは、「疑うことは寂しいことなんだ」の一文に尽きる。
「生きていく上での、自分の死、今後の人生、自分のスタイルを歌いたかったのだ」と、
語った時の表情が印象深いインタビューだった。
★♪しゃぼん:
すこぶるインパクトが強かった楽曲。
後に知ることになるが、「700番 第二巻三巻」の中に登場する歌の一つでもある。
2016年1月13日の強制入院。
「ベッドの上で新曲を呟いてみた」の記述がそれだ。
田家氏は、「あぁ、それでも」の詠嘆について、熱くASKAに訊ねた。
あまりにも、強く表現されたASKAの心の葛藤。
「人間は多面体で複雑。しゃぼんも角度によって違う」がこの名曲の根底だった。
聴く度に、心がギューッと詰まる感じがする、ASKAブルースの真骨頂だ。
ASKAのブログが始まって…、
アルバムの制作状況、進捗が随時報告されたことで、それからも当時のASKAの心情を汲み取ることができた。
しかし、活字と口語ではまるで受け止め方が変わる。
口調や表情、ASKAの一言に挟む間が、活字を目にした時よりも更に、このインタビューで印象を変えた。
MV収録時に出演したTVのインタビューでもそうだが、"かつて抱いた音楽への迷い"、"C&Aに対する愛情"、"アルバムへの想い"などは、これ以上のものはない。
やはり、ここでも言ってしまうよ。
心からの「ありがとう」を。
最後に。
このインタビューの中で、最も印象に残った言葉がある。
楽曲「Too many people」について。
ジャーマリスト音楽を歌ったことが初めて。言葉を楽曲で表現したい。
メロディよりも言葉。それを活かすためには、字余りでも構わない。
それを思い立った時、ASKA自身が、これまでのASKAの楽曲制作のスタイルの殻を破った瞬間だったに違いない。
これまでの制作では、大抵考えられない手法である。
だから、聴く人の心を熱くさせ、涙させるのだ。
魂の叫びにも似た、ASKAの言霊。
アルバム「Too many people」のサビ部として、頂点がここにある。
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【参考】
Interviewer:田家秀樹 氏
音楽評論家、ノンフィクション作家、音楽番組パーソナリティ、音楽番組監修者として幅広く活躍中。
音楽ライターとしては吉田拓郎、浜田省吾、甲斐バンド、CHAGE and ASKA、
GLAYといった面々と親交が深く、多数の書籍を執筆。